箱根との関わりが深い方のライフスタイルや
仕事に対する姿勢などを通して箱根を見つめてみることで
箱根の“もうひとつの”魅力を発見してしまおうという連載。
今回は、箱根ならではの伝統工芸・箱根寄木細工に携わる
OTA MOKKOの太田憲さん・海さんご夫妻に迫ります。
江戸時代から現代まで、200年近くにわたって受け継がれている箱根寄木細工の製作技術。箱根寄木細工とは、様々な種類の木材を細かくカットして組み合わせることによって描き出された、繊細で複雑な模様に特徴がある伝統工芸品です。それぞれの木の自然な色合いが寄木細工の模様を美しく引き立て、箱根名物のひとつとして愛されています。
その箱根寄木細工の若手作家として注目を集めるのが、OTA MOKKOを主宰する太田憲さん・海さんご夫妻。小田原駅から車で10分程度、昔ながらの町並みが残る板橋地区にアトリエ兼ショップを構えています。
「箱根寄木細工の存在を知ったのは、大人になってからのことでした。会社員を辞めて通った木工の専門学校の卒業が決まり、就職先を探していたときに箱根寄木細工に出合って衝撃を受けたんです。初めて箱根寄木細工を見たとき、何だこれ!? という新鮮な驚きを覚えたのと同時に、この技術を身につけたいと強く思いました」(憲さん)
その想いを胸に、箱根寄木細工の職人のもとへ弟子入り。その後8年間の修行生活を経て独立しました。修行する傍ら自身の作風を模索して、2012年にOTA MOKKOとしての活動をスタートしたのだそう。
「(憲さんが)OTA MOKKOを始めてからは、私もデザインや商品企画、細かい仕上げの作業などを手伝うようになりました」という妻の海さんは、ショップの運営も担当。まさに、憲さんと二人三脚で活動しています。
OTA MOKKOの作品の特長でありふたりのこだわりの象徴ともいえるのが、繊細な寄木の模様と、木がもともと持つ自然の色を活かした色合わせによる豊かな色彩表現。いずれも、私たちの知る箱根寄木細工とは少しテイストが異なる、モダンな雰囲気が印象的です。
このような雰囲気につくりあげるには、まず材料となる木を選ぶことが重要なのだそう。
「昔の箱根寄木細工では箱根に生育する木だけを使っていたそうですが、現在はどこの工房も産地を問わずいろいろな木を採用しています。うちは、日本国内だけでなく海外からも取り寄せているんです。だいたい25種類くらいの木を使っていますね」(憲さん)
そして、木の配色をどのようにするのかも、大きなポイントなのだといいます。
「配色は主に私が考えて、主人と相談しながら決めています。ちょっと色が違うだけで仕上がりの印象がまったく違ってくるので、おもしろいけど大変ですね」(海さん)
さらに配色に寄木の模様を組み合わせていきます。
「独立してからは、テーマとなる模様を毎年ひとつ決めて、その模様の表現方法を探っているんです。古典的な模様の年もあれば、自分たちが考案したオリジナルの模様の年もありますが、ひとつの模様を突き詰めることで、新しいアイデアが生まれることも多いんです」(憲さん)
「一度使った模様と配色の組み合わせは使わないと決めているので、模様も配色もあれこれ考えながら新しい表現を探っています」(海さん)
そうやって生まれたOTA MOKKOの作品は、とても木だけで構成されているとは思えないほど鮮やかで繊細な配色パターンが印象的。同系統の色をグラデーションにしたもの、あえて同じ色だけを使ったもの、対照的な色を組み合わせてコントラストが際立つようにしたもの……。白っぽい木肌から、黒やこげ茶、ピンク、黄色など、自然の色とは思えないような発色に心奪われます。
チャレンジャー精神を忘れず、日々試行錯誤しながら作品づくりに取り組んでいるOTA MOKKOのおふたり。オフの日には、お気に入りのスポットである箱根の金時山に登ってリフレッシュすることも多いのだそう。
「登山用の重装備も必要なく一時間ちょっとで登れる気軽な山なのに、登り切ったときにはものすごく達成感があるんです。晴れた日には富士山が一望できるところも気に入っています」(海さん)
「尾根から登っていくと、箱根山のカルデラが一望できるんです。すごく雄大な眺めで、箱根山の噴火によって誕生した箱根の土地の歴史を感じることができます」(憲さん)
箱根の伝統を受け継ぎつつ、新しい世代のものへと昇華させていこうと模索しているご夫婦ならではのリフレッシュ術。箱根寄木細工という、もともと箱根に根ざした活動をしているだけに、箱根の自然からパワーをもらうことも多いようです。
そんなおふたりですが、これからはどんな目標に向かって仕事をしていくつもりなのでしょう。最後に、今後の目標について語っていただきました。
「毎年ひとつずつ取り組んでいる寄木の模様が10個になったら、ちょうど10年の節目だと思っています。そのときには、それらの模様を全部組み合わせた作品をつくってみたいですね」(海さん)
「おみやげ品だけで完結しないものをつくりたいですね。箱根寄木細工というと、どうしてもおみやげのイメージが強いと思うんです。でも、もっと日常的に使えて、現代の暮らしに馴染むようなものを提案してきたい。日用品としての箱根寄木細工の表現を探り続けたいと思います」(憲さん)
伝統的なのにどこか新しい。そんなスタイルの箱根寄木細工を実現するべく活動し続けるOTA MOKKO。おふたりの挑戦は、まだまだ続くのです。
OTA MOKKOの太田憲さん・海さん。
結婚後、会社員生活を経てモノづくりの道へ。修行後、2012年に夫婦でOTA MOKKOとしての活動をスタート。モダンなセンスで日常に馴染む箱根寄木細工を製作し続けている。自身の活動以外にも、寄木細工の若手グループ「雑木囃子」を結成し、国内外への展示会などにも積極的に参加。アトリエに併設したショップでは、作品を購入することができる。
居心地のよい宿は、女子旅に欠かせないもの。こだわり派の女子におすすめしたいのが2017年4月20日にオープン予定の「箱根小涌園 天悠」。箱根の“自然”と“和”のおもてなしをコンセプトにした宿で、非日常感を味わうことができます。絶景の大浴場露天風呂や各部屋に設置されたかけ流し温泉の露天風呂など温泉地ならではのしつらえのほか、スパも併設。ロケーションを生かしたアクティビティなど、ここでしかできない体験ができるのも魅力です。
箱根小涌園 天悠(てんゆう)
住所 神奈川県足柄下郡箱根町二ノ平1297
開業 2017年4月20日
予約 受付中
http://www.ten-yu.com/
※すべての情報は2017年1月31日時点のものです